宮城県柴田郡川崎町大字川内字北川原山72番地
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院長コラム

「マインドフルネスとコンパッション」

いまから10年ほど前から精神科領域でマインドフルネスとよばれる精神療法が普及してきています。過去や未来への思いにふりまわされずに「今ここ」のできごとに意識を集中させることや自分の呼吸やからだの状態に意識をむけるとりくみです。もともとは仏教のおしえのなかで八正道という8つのとりくむべき精神修養の方法があるのですが、そのなかで「正念」をとりだして宗教的な要素をとりのぞいてメンタルヘルスのためにもちいるものです。不安やうつ、慢性疼痛などの精神症状にたいして効果があるとされていて不安の軽減や精神的な安定化に役立ち、脳機能の変化なども報告されています。

ほんらいの仏教のおしえのなかでは「正念」は「正しいおもい(正思)」や「正しいおこない(正業)」などとセットになっていて倫理的な態度や実践とかたくむすびついていたのですが、臨床的にもちいられているマインドフルネスが倫理的なものと切り離されていることが批判されることもあります。こころおだやかに犯罪行為に手をそめるようなことがあってもいいのか、それがほんとうの心の平安をもたらすのかというわけです。

それにたいして最近ではマインドフルネスはコンパッションと組み合わせて実施されるべきだという話もあります。コンパッションというのは慈悲や思いやりという意味のことばですが、自分じしんにたいしてあるいは他者にたいして向けられるものです。背景に自分と他者をべつべつに切り離して考えるべきではないという世界観があります。

2000年いじょうも前の仏のおしえが現代人のこころをいやす現実のなかに人間のこころの普遍的な法則のようなものを感じます。

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